毎年キミを思う日

前略  サイレンススズカさま

キミは元気に、天国を駆けていますか?

いまも、ひとりで駆けてますか?

それとも、天国では、お友達と駆けてますか?

たのしく、気持ちよく、走ってますか?

きのう、ものすごい雨の中、秋の天皇賞が行われました。キミの背中にいた武豊騎手が手綱をとり、キタサンブラックという馬が勝ちました。すごい歓声が起こり、武豊騎手がなんどもガッツポーズをして、オーナーの北島三郎さんがキタサンブラックの鼻をなんどもなでていました。キタサンブラックは優しい顔をむけていました。

キミは、空から見ていましたか?

1998年の秋の天皇賞、わたしは東京競馬場に来ていました。あまりにも速いキミが、競馬場の話題の中心でした。

GIファンファーレが鳴り響き、大歓声の中ゲートが開き、キミはコースへ。目の前で初めて見たキミは、ほんとうにバイクみたい。スタンドは大きな1つの生き物みたいにどよめいて、キミを見つめていました。

すごい逃げ足だ。ぶるっとしてしまいました。

強い速い馬がそのまま勝つより、それに向かっていって勝つ馬を見たいって、そんな思いを込めた馬券をにぎりながらあたしこう発してしまいました。

えー!来ちゃうの??また??来なきゃいいのに!

向正面をスーーーッ!とすすむバイクのようなキミがとつぜん、ガクッとなり、ハッと気がついたときは、他の馬たちがキミを通り過ぎ、キミは立ったまま、武豊騎手が下馬しました。スタンドは静かになったあと大きくどよめいて、レースどころではなくなりました。

キミはゴールに来ることはありませんでした。

わたしは自分が発した言葉がそうしたんだと思い、手が震えて、周りの音も遠くに聴こえて、しばらく固まり、どうやって帰ったか覚えてません。

その後何年も、競馬場に向かえませんでした。競馬もできませんでした。

それから結婚をして、テレビで競馬中継を見るうち、馬のことを少しずつまた考えるようになりました。

牧場へ行き仔馬や母馬、牡馬を見て、馬の博物館や馬事公苑の催しで馬のことを知って、馬が生まれてからどこでどうやって大きくなって競馬場へ来るか、競馬場へ来れずに終わる命もあるということ、どんな人たちがどんなお世話をしてるかとか、少しずつ知っていきました。

そして、競走馬として生まれて来た仔たちを応援したいと思い、東京競馬場のそばに引っ越し、暮らしはじめました。小さい頃から父が競馬を教えてくれていて、その頃はテレビ画面の向こうの世界だったけれど、いまはすぐそこに、そばに、その世界があります。キミが亡くなった秋の天皇賞は、競馬を思い見つめ直す1日。私にとって、キミを強く思う、キミの命日です。


速さは自由か、孤独か、、、ってCMにあったけれど、他の馬たちからはるかに離れてひとりで走るキミ。  自由だったかもしれないけど、孤独ではなかったと思いたいです。スタンドでたくさんのひとたちが、キミを見つめて応援してた。

秋の天皇賞のたびに、キミを思い、いっそう競馬を好きになります。武豊騎手、キタサンブラック、すごかったですよね!胸がいっぱい。そのお返しにまた、たくさん応援したいと思います。

キミが空で楽しく駆けてますように!

*前略ディープインパクトさま展をやっていたので、わたしはサイレンススズカに宛てて書いてみました!

やさしい顔。キタサンブラック。脚元無事でありますように。

Thank you for reading♡

投稿者: usajun

浅草出身、同級生ユニットの片割れ。千束小学校出身。